第6章 爆豪くんのいない四日間
全員合格とはならなかっだ、私以外大きな怪我をしてる人はおらず、無事試験終了となった。
学校へと戻り、不機嫌な様子の爆豪くんに付き添われリカバリーガールに折れた肩を治療してもらった。治療後、激しい脱力感に見舞われ、そのまま早めに休む事となった。部屋まで付き添ってくれた爆豪くんはいつも通り不機嫌だったけど、終始無言でそれがまた逆に怖かった。
早めに休養を取ったせいか、日付をまたぐ前に目を覚ました。未だ気だるい体を起こし、窓を開けた。夜風が頬を撫で、重たかった体が少しだけ軽くなったような気がした。
「なんか濃い一日だったな…。」
ただ流れに身を任せ、編入したヒーロー科。出来る事を頑張りたい。ただ、それだけで、皆のようにヒーローに対する憧れや、ヒーローになりたいという強い意思のない私。そんな私がヒーロー仮免許を所持していいものなのか。私よりもこれを持つに相応しい人は沢山いる筈なのに。ふいに士傑の肉倉先輩の言葉を思い出した。
『徒者が世に憚る方がおかしい。』
その意見に賛同は出来たものの、その粛清を行うと言った肉倉先輩を見て、それを成すべき人は貴方じゃないと思った。じゃあ、私は一体誰がそれをすべきだと思った…?私も肉倉先輩と同じ人種なのだろうか。他の人の目には私も肉倉先輩のように映ってるのだろうか。…だとしたら、なんか嫌だな。
ここに来た時と同じく、ヒーローに対する憧れは無い。けど、もし、そんな私が万が一、ヒーローになれるとしたら、見返りを求めず、助けを求める人の手を握りたい。自分の為では無く、誰かの為に。誰かを救うという行為が富や名声を得る為の手段となるのでは無く、誰かを救う事を目的とするヒーローになりたい。
「…やっぱり、私、ヒーローになりたい…のかな?」
自分の気持ちが自分でも分からない。記憶が戻れば、この気持ちも整理できるのだろうか。