第5章 ヒーロー仮免許取得試験
痛みは無いが、いつも通りに振れない刀。女であって、力も弱い。同じ受験生相手とやり合うにしても全面的に劣ってる。けど、だからと言って、ただ緑谷くん一人をプロヒーロー相手に向かわせるなんて出来なかった。私だって守りたい。
「緑谷!尾白!橘!加勢する!」
「常闇くん!三奈ちゃん!」
「あとは怪我人の安全確保…!こいつらの排除だ!」
次々と応援が駆け付け、敵(ヴィラン)を制圧する。
轟くんと夜嵐イナサの個性により閉じ込められていたギャングオルカ。だがそれを突破された。轟くんと夜嵐イナサはギャングオルカの個性の影響で動く事が出来ない状況。────まずい。そう思ったが、目の前の敵(ヴィラン)の攻撃を凌ぐのに手一杯な私はクラスメイトの危機を感じ乍もそこに走る事が出来なかった。
「二人から離れて下さい!!!」
私のすぐ側で交戦していた筈の緑谷くんは目にも止まらぬ速さで二人の元へ…ギャングオルカの元へ駆け付けた。緑谷くんの強力な蹴りはアッサリと止められてしまった。けど、ピンチの二人の元へ真っ先に駆け付けた緑谷くんを見て、自身の強く抱くヒーロー像と重なった。
『でもヒーローは助けてくれなかったじゃない。』
また頭の中で誰かの声がした。その思考を割くように試験終了を告げる音がフィールド内に鳴り響いた。