第5章 ヒーロー仮免許取得試験
この状況下で私が出来る事は、要救助者の避難誘導。痛覚を記憶から削除はしたが、怪我が治ったワケじゃない。ただ、誤魔化してるだけ。この肩じゃまともに刀は振れない。
「皆を避難させろ!奥へ!敵(ヴィラン)から出来るだけ距離をおけ!」
そう言って敵(ヴィラン)の元へ真っ先に飛び出したのは真堂さんだった。地面が激しい音をたて崩れたが、ギャングオルカの個性によって真堂さんは地面に平伏した。そこに轟くんが到着し、氷結によってギャングオルガを真堂さんから引き離した。そして突如突風が巻き起こり、敵(ヴィラン)が吹き飛ばされた。士傑高校の夜嵐イナサ。───戦力が集まりつつある。
「皆!今のうちに!こっちよ!」
子供達の手を引き、出来るだけ敵(ヴィラン)から遠ざける為に走った。
「やばい突破されてる!こっち来る!」
前線でギャングオルカ達と交戦していた轟くんと夜嵐イナサは地面に倒れていた。あの轟くんが叶わないなんて、やはりNo10ヒーローの名は伊達じゃない。
向かってくる敵(ヴィラン)に緑谷くんが飛び出そうとすると再び地面が割れた。
「足は止めたぞ。奴らを行動不能にしろ!手分けして残りの傷病者を避難させるんだ!」
真堂さんの声に真っ先に緑谷くんが飛び出した。
「ごめんなさい!この子達をお願い!」
緑谷くんがいくら強力な個性を持っていても、一人じゃ限界がある。大した戦力にならないにしても、時間稼ぎ位は出来る筈だ。そう思い、他校生に子供達を託し、前線へと走った。
「橘!」
「尾白くん!」
「オイ、その肩…!」
「見た目程大した事ないの。痛みも無い。大丈夫だよ。」
尾白くんを心配させまいと笑ってみせた。それを見て納得してくれたのか、あまり無茶すんなよと声を掛けてくれたが、私が前線へ向かう事に反対はしなかった。
「借りる!」
尾白くんは尻尾で敵(ヴィラン)の腕を掴むと尻尾を振り回し、複数の敵(ヴィラン)を殴り倒した。
「尾白くん!玲奈ちゃん!」
「怪我人の避難済んだって!すぐに何人か加勢にくるぞ!」