第5章 ヒーロー仮免許取得試験
一旦三人と別れ、安全な場所まで私一人で案内する事になった。
「もう大丈夫ですよ。出血も酷くないし、意識も鮮明。」
この怪我なら痛みを忘れても体に影響は無さそうだ。これなら個性を使っても問題無さそう。
「少しだけ痛いの忘れてもらいますね。」
二人の頭にそっと手を触れた。痛覚に関する記憶を一時的に削除した。
「…あれ?痛…くない!」
「これで歩けそうですか?安全な場所まで私が同行します。」
二人を連れてスタート地点の方へ向かうと、救助スペースが確保されており、そこには既に救助された人達と、受験生達が沢山いた。
「そこの貴方!ちょっと見して!」
「あっハイ!腕を怪我していますが、他は過擦り傷程度。意識も鮮明。自身での歩行も可能です。」
「…うん!じゃあ右のスペースに案内して!」
救護スペースは人々が苦痛に叫ぶ声と、子供達の泣き声で覆われていた。
軽傷で泣き叫ぶ子供達の頭に触れ、その僅かな痛みと悲しみを一時的に削除した。
「もう大丈夫よ。泣かないで。」
少しでも子供達の不安が和らぐように笑った。その時、救護スペースの側で激しい爆発が起きた。
「危ない!」
爆発によって飛んできた瓦礫から子供達を守るように子供達に覆い被さったと同時に、右肩に激しい痛みが走った。
「────っ!」
「お姉ちゃん!」
「…大丈夫?怪我は無い?」
ズキズキと鈍い痛みが体を支配する。…最悪。今の衝撃で瓦礫が右肩を直撃した。右肩からの出血。…大丈夫。手は動く。痛みを消せば動ける。自身の頭に触れ、痛覚を削除した。それにより先程までの痛みは完全に消えた。
『敵(ヴィラン)が姿を現し追撃を開始!現場のヒーロー候補生は敵(ヴィラン)を制圧しつつ救助を続行して下さい。』
姿を現したのはNo.10ヒーロー〝ギャングオルカ〟だった。
「どう動く!?ヒーロー!」