第5章 ヒーロー仮免許取得試験
日々訓練に明け暮れ、あっという間に月日は流れ、ヒーロー仮免許取得試験当日を迎えた。
切島くんの誤解は解けないままではあったけど、切島くんの中であの件が消化できたのか、以前と殆ど変わらないように接してくれるようになったが、お茶子ちゃんとの関係は変わらぬままだった。
試験会場に着くと、各々緊張した面持ちであった。それを吹き飛ばすかのように切島くんがいつものやろうぜ!と皆に声を掛けると、切島くんの合図に合わせ、Plus ultra!と誰よりも声を張り上げ、円陣に入ってきた。その声量にも驚いたが、失礼致しましたと地面に頭を打ち付けながら頭を下げる彼に何よりも驚いた。
「待ってあの制服…!」
「あ!マジでか。」
「アレじゃん!!西の!!!有名な!!」
彼らを見て周りがガヤガヤと騒ぎ出す。
「東の雄英。西の士傑。」
雄英と並ぶヒーロー科の難関校、士傑高校。
頭を地面に打ち付けた彼は、額から血を流し乍、熱く雄英への熱意を語った。なんてキャラの濃い人だと思い乍見ていると、相澤先生が、夜嵐イナサと彼の名を呟いた。なんでも彼は昨年度の雄英の推薦入試をトップの成績で合格したにも拘わらず、入学を辞退したらしい。彼の口振りから雄英が好きだと言った言葉が偽りと思えなかっただけに入学辞退という行動が理解出来なかった。そう感じたのは私だけで無かったらしく、瀬呂くんが私と同じ疑問を口にすると、三奈ちゃんも変なの、と呟いた。
「変だが本物だ。マークしとけ。」