第4章 欠落した記憶
「…はあ…っ、はあ…っ、…っ、」
得体の知れない恐怖が巻き付いて離れない。私は一体何に怯えているというのか。そして、それと同時に湧き上がってくるとてつもない怒り。
「ヒーローなんていない!ヒーローは助けに来ない!この世界にヒーローなんかいないのよ!皆贋物!贋物よ!」
「おい!落ち着け!…っクソ!玲奈!」
腕を捕まれ、私の口を塞ぐように爆豪くんが私の唇に自身の唇を重ねた。それに抵抗する力も弱まり、爆豪くんの胸に抱き締められた。
「今度こそ俺がお前を守る。絶対誰にも傷付けさせたりなんかしねえ。だから黙って守られてろ。」
「ばくご、う、く…っ、んっ、」
返事はいらないとばかりに再び唇を塞がれた。恐怖と怒りに縛り付けられていた気持ちがスッと軽くなっていくような気がした。
「おーい、爆豪!なんかスゲー音したけど大丈夫か?」
ノック無しに部屋に入ってきた切島くんと目があった。
「うお!あ、わ、悪い!」
「クソ髪!何勝手に部屋に入って来てやがる!」
「いや、悪い!まさか橘といい雰囲気だったとは思わなくて…悪い!」
「死ね!」
切島くんに爆豪くんとキスしてる所を見られた。そして、爆豪くんは人を殺してしまいそうな勢いで、両手を爆破させ乍切島くんを追って部屋を出て行った。