第2章 正しき社会のために
インゲニウムを再起不能に陥れ、次なる獲物を狙って出て行ったステインは帰ってこなかった。ステインは私の事を本当の妹だと思い、愛情を注いでくれていた。だから、必ず私の元へ帰って来る。今までだってそうだった。でも、ステインは夜が明けても帰ってこなかった。記憶操作の個性が解けてしまったのではないかと不安になった。もし、記憶が元に戻ったなら、再びステインの記憶を操作すればいいが、記憶が正常化された彼の頭に再び手を添える事など出来る訳が無い。記憶操作する前に殺されるのがオチだ。────嫌だ、ステインを失いたくない。お願い、早く帰ってきて。そう思いながら長い長い一日を過ごしたが、やはりステインは戻ってこなかった。
そして私は不安になり、出るなと言われていた仮住まいを飛び出し、新聞とテレビのニュースでステインが逮捕された事を知った。
『三人の敵はいずれも住所・戸籍不明の男。その外見的特徴とNHAテレビが偶然捉えた二人の男の姿から先月雄英高校を襲った〝敵連合〟との繋がりを指摘する声も上がっています。〝オールマイト〟以降の単独犯罪者では最多の人数。犯罪史上に名を残すであろう敵(ヴィラン)〝ヒーロー殺し・ステイン〟犯行の詳しい動機など追ってお伝えします。』
ニュースから聞こえてくるその声が、酷く頭に響いた。────知らない、知らない、知らない。敵連合って何?その組織とステインは共謀を計っていた?そんなの知らない。ステインは私に何も言ってなかった。どういうこと?ステインを捕まえたのはエンデヴァー?七名のヒーロー、高校生三人?許さない、許さない、許さない。どうして私からステインを奪うの?私にはステインしかいないのに。