第4章 欠落した記憶
「…っ!玲奈!」
誰かに名前を呼ばれ、ぼやがかかっていたような視界がクリアになる。天井と共に視界に映ったのは爆豪くんだった。
「ば…くご、う、くん?」
いつも怒った顔で、目を尖らせている爆豪くんの顔は不安で堪らない、そんな顔だった。爆豪くんの名前を呼ぶと、その不安そうな顔をよがませて、私を抱き寄せた。さっきまで苦しかったのが嘘のように、その気持ちは融解されていった。
「…痛い。」
そう言うと、爆豪くんは私を抱いていた腕を解き、私をベッドの上に突き放した。いつもそうだけど、爆豪くんは乱暴だ。
ベッドから体を起こし、時計に目をやると、時刻は八時を回っていた。
「嘘…!もうこんな時間!?」
「テメェがいつまで経っても下りて来ねえから俺が迎えに来てやったんだ!さっさと準備しやがれ!」
あれ?私、昨日鍵掛けて寝たよね?なのに、なんで爆豪くん、私の部屋に…?不思議に思ってドアの方を見ると、ドアは爆破されボロボロだった。
「…普通に起こしてくれれば良かったのに。」
「部屋の前に来たらテメェの叫び声が聞こえたからだろうが!」
「叫び声…?」
「悪い夢でも見たのかよ?」
「…分かんない。」
不安で堪らなかった気持ちはいつの間にかすっかり消えていて、悪い夢を見たのか、それすらも分からない。
「着替えたらさっさと降りてこい。」
爆豪くんはそう言って部屋を出て行った。私は慌てて制服に着替え、部屋を出た。
共有スペースに行くと、爆豪くんが不機嫌そうに腕組みをし乍私を待っていた。
「ごめんなさい。」
「メシ食ってねえだろ。学校着いたら食え。」
そう言ってサンドイッチを渡された。
「爆豪くんが作ってくれたの?」
「他に誰が作るって言うんだよ!」
「…ありがとう。」
「…おう。」
遅刻する事無く学校に到着出来た。HRが終わり食べたサンドイッチは、ただのサンドイッチとは思えない位美味しかった。ヒーローとしての戦闘センスや勉強だけじゃなく料理も出来るなんて…爆豪くんハイスペックだ。