第4章 欠落した記憶
緑谷くんに貰った死んだ両親の写真を眺めるが、やはり何も感じない。そもそも私は本当に橘玲奈なのだろうか。容姿や個性が同じだけで、全くの別人なのでは無いかと疑いたくもなる。
「…敵(ヴィラン)と一人のヒーローの遺体。」
ふと、病室で校長先生に言われた言葉を思い出した。敵連合のアジトで発見される前、私がそこにいたという痕跡があった場所にいた人物達。結果、私は其処に居なかったらしいが、遺体があったと言う事は確実に其処で何かが起きた。
「校長先生に聞いたら分かるかな…?」
多分、ヒーローが来たという事は、私を助けに来てくれたって事なんだと思う。けど、遺体で発見されたという事は救出に至らなかったという事なのだろう。だとしたら、私を助けに来てくれたのに、命を落としてしまったそのヒーローには本当に申し訳無い事をした。
「どうして私は何も覚えてないの…?」
そっと自分の頭に触れた。
「search.」
私の個性は対象者の頭に触れる事で記憶を覗き見る事が出来る。人の頭の中はパソコンのように記憶がそれぞれフォルダ分けされてて、パソコンのデータをクリックし、その記憶という名のデータを読み取るイメージ。けど、私の記憶は何度個性で探っても見つからない。
「やっぱり、ダメ…か。」
明日、校長先生に聞いてみよう。私の両親を殺害した敵(ヴィラン)と私を助けに来てくれたヒーローについて。もしかしたら、何か思い出せるかもしれない。そう思い乍眠りについた。
真っ暗な闇の中、誰かが厭らしい笑みを浮かべ乍笑った。そして、その暗闇を裂くように、誰かの泣き叫ぶ声がした。