第4章 欠落した記憶
緑谷くんから貰った両親の写真。両親の顔でも見れば何か思い出すかと思ったが、残念乍、湧き上がってくる感情は無く、知らない人の写真を見ている。そんな気分だった。両親の写真一つで記憶が戻るならば、恐らく幼馴染みである爆豪くんと緑谷くんと会った時点で何か思い出してる筈だ。本当に私は空っぽなんだと、改めて思い知らされた瞬間だった。
「緑谷くん、私ってどんな子だった?」
「玲奈ちゃんは無個性の僕にも優しくて、かっちゃんに苛められてる時、かっちゃんと僕の間によく割って入って来てくれてたよ。それで、よく一緒に泣いてたかな。」
「爆豪くんは昔からあんな感じだったの?」
「あ、うん。そうだね。」
「私、ヒーローになりたかったのかな?」
「多分、そうだと思うよ。よく三人でオールマイトの動画見たり、ヒーローごっこしたり。それに、かっちゃんの相棒(サイドキック)になるんだって言ってたしね。玲奈ちゃんの個性が〝記憶操作〟だって分かった時は、ヒーロー向けの個性じゃない。これじゃかっちゃんの相棒(サイドキック)になれないって泣いてたし。」
やはり、この御時世、記憶を失う前の私もヒーローになりたかったらしい。そして、あの怒りっぽい爆豪くんの相棒(サイドキック)になりたかったと知って少しだけ驚いた。本当に私達は幼馴染みで仲が良かったのだと。
「玲奈ちゃんとは幼稚園までしか一緒じゃなかったんだけど、小学校に入ってからは、個性無しでもヒーローになれるようにって言って格闘技習ってたみたいだし。」
「…そうなんだ。」
不思議と体が動くこの感じは、その習い事の影響だったのかと納得した。