第4章 欠落した記憶
「ねえ、この人は?」
私を抱いて幸せそうに笑う綺麗な女の人。
「この人が玲奈ちゃんのお母さんだよ。」
「…この人が?」
「それで、こっちが玲奈ちゃんのお父さん。」
そう言って緑谷くんが指さした私のお父さん。とても優しそうな人だった。私とお母さんを守る為にヒーローになる道を諦めたというお父さん。
「これ、良かったら持って行って。」
「え…?いいの?」
「うん、勿論だよ!」
写真を見ても、やっぱりピンとくる物は無く、両親だというのに、まるで赤の他人を見ているような気持ちだった。けど、この人達が私を守ろうとしてくれたから、私は今こうやって生きている。両親の顔すら覚えていない私を、死んだ両親は親不孝者だと嘆くだろうか。