第4章 欠落した記憶
案の定、登校してきた爆豪くんに先に行くなつったろうが!とキレられた。どうやら、伝言を頼んだ三人もそれを爆豪くんに伝えるとキレられたらしい。取り敢えず謝るしか爆豪くんの怒りを鎮める方法が見つからず、ごめんなさいと謝った。謝った所で爆豪くんの怒りが収まるとは思わなかったけど、謝罪の言葉を口にすると、次から気を付けろや、とそれだけで、怒りは一瞬にして鎮火した。
お茶子ちゃんと同じ教室で勉強をするという事が息苦しくて堪らなかった。そして、昨日の一件があって、女の子達と少し距離が出来てしまった気がする。私自身、自分の態度に問題があったと思ってるし、一学期から一緒に勉強してきたお茶子ちゃんと、数日前に編入してきた私。女の子達がどっちの肩を持つかなんて、分かりきった事だった。
「橘、ちょっといい?」
耳郎さんに声を掛けられ、耳郎さんと共に教室を出た。
「麗日と仲直りした?」
その問い掛けに私は横に首を振った。
「まあさ、アンタのそういう考え方が間違えだとは言わないけどさ、誰もが純粋に人助けをする為にヒーローを目指してる訳じゃない。けど、ヒーローって命に関わる危ない仕事だし、生半可な覚悟でやってる訳じゃないから。その気持ちは分かってあげてよ。それに、橘がそういうのが嫌いだって分かった上でその話をしたって事は、アンタにそれを黙ったまま仲良くやって行こうって思わなかった麗日の誠意でもあると思うよ。麗日がそれを言わなかったら、橘は変わらず麗日と仲良くしてたでしょ?」
確かに、私がそういうのを嫌っていると知ってい乍もそれを敢えて口にしたのは、お茶子ちゃんなりの誠意だったのかもしれない。けど、だからと言ってそれを受け入れられるかと言ったら答えはノーだ。
「別に無理して仲良くしろとは言わないけど、麗日はアンタと仲良くしたいと思ってると思うから。お節介だとは思うけどさ、折角同じクラスになったんだし、仲違いになるよりは、仲良くしたいじゃん。」
「…うん、ありがとう。」
そうは言ったものの、やはりお茶子ちゃんの事を簡単に受け入れられる程、器の大きな人間じゃない私。頭で理解してても、心がそれを受け止められない。