第4章 欠落した記憶
あの後、皆と別れ部屋に戻ってすぐ眠りについた。朝起きても、昨日の一件の突っ借りが取れる事は無かった。不快感。そんなフレーズがピッタリだった。
朝食を取るべく、着替えを済ませ共有スペースへ向かうとお茶子ちゃんがいた。気まずそうにし乍も笑顔を浮かべおはようと声を掛けてくれた。
「…おはよう。」
挨拶を返したものの、お茶子ちゃんと話すと不快感は増すばかりで、顔を見るのも嫌だった。仲良くなれる。仲良くなりたい。そんな気持ちは消えて無くなっていた。
「玲奈ちゃん、なんかごめんね。ウチのせいで嫌な気分にさせちゃって。」
「…別に。」
「不純な動機やけど、ウチ本気でヒーローになりたいと思ってるから。だから、」
「嘘。そんなの嘘よ。人間の本質は変わらない。人助けとお金をイコールで結びつけるような人はヒーローじゃない。」
その言葉にお茶子ちゃんは唇を噛み締めた。
「玲奈ちゃん、麗日さん、おはよう。えっと、どうしたの…?」
心配そうな表情を浮かべ緑谷くんが声を掛けてきた。
「…何でもないよ。」
その場にそれ以上居たくなくて、朝食を取るつもりで降りてきたけど、再び部屋へと戻り、リュックを背負い、いつもより随分早いけど、学校へ向かう事にした。リュックを背負い、一階に降りると、お茶子ちゃんの姿は無かった。代わりに、上鳴くん、瀬呂くん、峰田くんが朝から元気のいい笑い声を響かせ乍朝食を取っていた。
「橘おはよー。」
「おはよう。」
「橘、もう学校行くの?早くね?」
「うん。ちょっと授業で分からない所あったから、学校に行って勉強しようと思って。」
「オイラが手取り足取り教えてやろうか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。」
「遠慮するなよー!クラスメイトだろ?」
「勉強は爆豪くんに教えて貰ってるから大丈夫。」
他の人に勉強を教えて貰ったら爆豪くんに怒られるような気がしたから、そう言って断ると、峰田くんは、いいよな爆豪は、と唇を尖らせた。
「爆豪くんに今日は先に行ってるねって伝えてて貰えるかな?」
「おー、了解。」
先に行ったなんて知ったらきっと爆豪くん怒るんだろうな。けど、一人になりたい気分だった。お茶子ちゃんとは同じクラスだし、同じ寮。嫌でも顔を合わせなきゃいけない。憂鬱だ。