第4章 欠落した記憶
「それにしても今日はビックリしたよー。」
放課後、夕食やお風呂を済ませ、女の子だけで共有スペースに集まっていると、お茶子ちゃんが口を開いた。
「玲奈ちゃん、物間くんに、あんな事言っちゃうんやもん。」
「ね!それ!私もビックリしたよ!」
「まあ、彼は前々からヒーローらしからぬ物言いでしたものね。」
私自身もどうしてあんなにも憤りを感じ怒ったのか分からなかったけど、彼が許せなかった。
「私、A組で良かった。あの人とは仲良くなれそうもないもん。」
少なからずA組には物間くんと呼ばれた彼のような人はいない。そう思ったから。
「あはは、その、まあ、私もヒーロー目指した理由、お金なんだよね。皆と比べたらホント不純な動機なんだけどさ。」
言いづらそうにそう言って苦笑いを浮かべるお茶子ちゃん。
「家、家計かなり厳しくってさー。」
家計の手助けをする為にヒーローを志していると言ったお茶子ちゃん。それを皆は立派だと言った。私自身、家族の為に命を掛ける仕事を選択したお茶子ちゃんの気持ちが理解出来ない訳では無かったけれど、どうしてもそれを受け入れる事が出来なかった。金銭の為にヒーローになりたいなんて、間違えだと思う。だって、ヒーローっていうのは見返りを求めないものでしょ?
「…私、部屋に戻る。」
「あ、玲奈ちゃん。」
お茶子ちゃんに手を掴まれ引き止められた。それが不愉快で仕方なかった。
「離して。」
「あ、うん…ごめんね。」
ヒーロー向きじゃない私の個性をカッコいいと褒めてくれたお茶子ちゃん。曇りないその真っ直ぐな笑顔を見て、いいなって思った。でも違った。お金に目が眩んだ贋物。汚い。仲良くなれると思ったのに、何だか裏切られたような気分だ。
この世界に見返りを求めないヒーローなんていない。名声や金に目が眩んだ汚い贋物のヒーローばかりだ。