第1章 ヒーローなんていない※
私の上で腰を振り付け、気持ち悪い息を吐きつけていたソイツの腹から鋭い刃が飛び出した。その刃が引き抜きれると、ポッチャマンは空いた腹から血を噴き出し私の上に倒れた。ポッチャマンの背後に立つ歪な人影。
「名声、金…どいつもこいつもヒーロー名乗りやがって…てめェらはヒーローなんかじゃねえ。」
先程ポッチャマンを刺したであろう刀についた血をペロりと舐める彼。私は助かったのだろうか…?彼はヒーローなのだろうか?
「なんだ子供か。生きてんのか?」
血のように紅い巻物と沢山の刃物を携えた彼。───嗚呼、私もこの人に殺されるのかな?でも生きていたっていいことなんてない。両親は死んだ。私は穢された。ヒーローなんていないと知ったこの世界、生きてても仕方がない。
「…お願い、殺し、て…。」
振り上げられた刃は私の体にではなく、私を拘束していた手錠に。
「時機に警察が来る。それまでここにいろ。」
引き裂かれた衣服、ほとんど裸に近い私に、彼は首に巻いていた布を掛けてくれた。そして、私を置いて出ていこうとした。そんな彼の姿に、オールマイトの姿が重なった。彼はヒーローなのだろうか。それとも敵(ヴィラン)なのだろうか。でも、そんなのどっちだっていい。私にとっては、彼が、彼だけがヒーローだ。
ボロボロになった体、無理矢理犯されたせいで下半身は特に痛い。でも、今彼を逃せば多分もう二度と会えない。だから、私は力を振り絞って彼の元へ走った。ボロボロの私を見て油断してたこともあっただろう。彼の頭に手を触れ、私はこう言った。
「input。」
私に向けられた刃は、その私の言葉によって止まった。
「…帰るぞ。」
「うん。」
彼はボロボロになった私を抱えその場を去った。
これが私とステインの出逢い。そして、私の人生を大きく変えた出来事だった。