第4章 欠落した記憶
「あのコスチュームはなんだよ。」
「え?」
「ピッタリ過ぎんだろうが。」
自分自身でもそう思っていたが、やはり他人の目から見てもそう見えていたらしい。それを異性である爆豪くんに指摘され、何だか少し恥ずかしかった。
「あんなのがくるなんて思ってなくって。」
「ちゃんと希望書かねえからそうなんだろうが。」
「でも、希望はちゃんと書いたよ。」
「どう書いたらあんなダッセェのがくんだよ。」
「えっと、耐熱性に優れてて、風の抵抗を軽減出来るのって。」
そう言うと爆豪くんは少しだけ驚いたような顔をした。
「…それ、テメェで考えたのか?」
「うん、そうだけど…。」
すると口角をクイッと上げた爆豪くん。笑っているのにこんなにも人相が悪い人、初めて見た。その表情はヒーローというよりは、敵(ヴィラン)と言った方がしっくりくる。私の今の言葉の何処に笑う要素があったのか全く分からなかった。いや、もっと言えばなんで爆豪くんがいつもそんなに不機嫌なのかも分からない。怒らせるつもりなんて毛頭無いのに、私はここに来てから爆豪くんを怒らせてばかりだ。けど、自分に非があるとは思わない。なんて思っていたら、寮に到着。
「…それじゃあ、また明日。」
「おい、何処行こうとしてんだ。」
背負っていたリュックを捕まれた。…何処って、自分の部屋に帰ろうとしてるんだけど。
「勉強見てやるから来い。」
「いや、いいよ。そんな悪いし。」
「俺が見てやるつってんだからつべこべ言わずとっとと来いや!」
そのまま引き摺られるような形で爆豪くんの部屋に連れて行かれた。不思議と怖いと思わなかったのは、爆豪くんの機嫌が心做しか良かったせいもあったのかもしれない。