第4章 欠落した記憶
初めて受けるヒーロー科の授業に圧倒されながらもなんとか一日が終わった。
エクトプラズム先生に個性の性質上、私は間合いを詰める必要があると言われた。遠距離戦を得意とする敵(ヴィラン)相手じゃ、刀一つじゃ今の私じゃそこから接近戦に持ち込むのは難しいとの事。飛び道具を使用し私も遠距離から攻撃出来たらいいのだが、試しに使用してみた飛び道具は明後日の方向に。妙に体に馴染むのはこの刀だけで、他の武器を使用するには練習が必要そうだ。
別にヒーローになりたい訳じゃないのに、真剣に授業に取り組んでしまうのは、私の元々の性分なのだろうか。ただ、場の雰囲気に順応しようとしてるだけなのか。ヒーローと聞けば聞こえはいいが、不思議と魅了を感じないし、ヒーローを目指し雄英のヒーロー科に入った皆の気持ちが全く理解出来ない。自らを顧みず、他を救い出す。己の為に力を振るわず、私欲に囚われない。それがヒーローのあるべき姿。でも、そんな人間がいる訳が無い。人間は汚い。ヒーローの名を語り、自身の力を誇示する存在。…頭が痛い。不意に襲ってくる激しい頭痛に眩暈がした。
「おい!何勝手に帰ってやがる!」
…デジャヴ。振り返ると今朝同様、不機嫌な爆豪くん。彼が機嫌がいい時はあるのだろうか。そう思いたくなる位、私は不機嫌そうな爆豪くんの顔しか見ていない。
私の隣に並ぶと、私の歩幅に合わせ、ゆっくり歩く爆豪くん。