第4章 欠落した記憶
トレーニングの台所ランド、略してTDLと紹介された体育館γ。セメントス先生の考案した施設ならしく、一人一人の生徒に合わせた地形や物を用意出来る事から台所という名前が付いたらしい。
エクトプラズム先生が言うに、必殺技は必ずしも攻撃である必要性は無いらしく、戦闘向きで無い個性の私は、そっちの方向で必殺技を身に付けていく事になったが、周りに目をやれば、皆ヒーロー向きの派手な個性で、爆発音や破壊音が絶え間なく体育館に響き渡り、それに圧倒された。中でも、爆豪くんは目を引いた。拳を振り上げればそこから爆発が起きる。恐らくそういった類の個性なのだろう。
「何ヌボーットシテイル?」
エクトプラズム先生に頭を小突かれた。
「あ、ごめんなさい。なんか、圧倒されちゃって。」
「君ノ個性ハ、戦闘向キデハナイカラナ。個性ノ発動モ、接近戦ニ持チ込ム必要ガアルナ。一先ズハ、個性ヲ使用スル為ニ接近戦ニオケル戦闘技術ヲ身ニ付ケル必要ガアリソウダ。」
自分でもそうなるだろうと予測していたが、やはり私の個性の性質上、選択肢はその一つのようだ。女である私は握力や筋力は男の人に劣る。となれば、武器を持って戦うのがベスト。腰に携えた刀にそっと手を触れる。記憶を持たない私が唯一持っていた物。不思議と私を温かい気持ちにさせてくれる。どうして一般人であった筈の私がこんな物を持っていたのか分からない。そもそも、ただそこにあっただけで私の物だという保証もない。けど、私の中には確証があった。これは私に取って掛け替えのない物で、私の記憶を繋ぐピースだと。
「エクトプラズム先生、宜しくお願いします!」
相澤先生とやった対人試験の時と同じ、この刀を握れば、不思議と体が動く。一体私は何者なのだろうか。