第4章 欠落した記憶
「橘玲奈ちゃん。私、蛙吹梅雨って言うの。昨日は体調が優れなくって挨拶出来なくてごめんなさい。梅雨ちゃんって呼んでちょうだい。」
「梅雨、ちゃん。」
「ええ。お友達になりたい人には名前で呼んで欲しいのよ。だから私も玲奈ちゃんって呼ばせてちょうだいね。」
「うちもー!ね、ええやろ?」
「え、なになに?何の話し?」
「ケロケロ。玲奈ちゃんと仲良くなりたいのよって話よ。」
私を囲って楽しそうに話す皆。つられて笑顔になる。女の子達とは上手くやっていけそうな気がする。
「そういえばさ、玲奈ちゃんの個性ってどんなんなん?」
「戦闘向きの個性じゃなくて恥ずかしいんだけど…〝記憶操作〟って個性なの。」
「え!?何それ!?なんかめっちゃカッコいいね!具体的にはどんな感じなん?」
「記憶を書き換えたり、覗いたりとか…かな。」
「そんなスッゴい個性があるんやね!」
明らかにヒーロー向けではない個性なのに、曇のない笑顔でそう言って私の個性を褒めてくれるお茶子ちゃん。
「玲奈ちゃんってさ、緑谷と爆豪と幼馴染みなんでしょ?」
「あ…うん。」
「二人って昔からあんな感じなのー?」
三奈ちゃんからの質問に、私は言葉を詰まらせた。
「皆さん、着替えが済んだのなら早く体育館γへ行きますわよ。」
八百万さんに急かされ、話は一時中断となった。
こうやって過去の事に触れられる度に、言葉を詰まらせてしまう現状に溜息が漏れた。