第4章 欠落した記憶
男子最後のお部屋は砂糖くん。一件普通のお部屋に見えたが、砂糖くんの部屋は甘い香りで溢れてて、その香りの正体は、砂糖くんの手作りのシフォンケーキ。ふわふわで甘いシフォンケーキをご馳走になった。こんなに美味しい物久しぶりに食べた気がする。
男子の部屋のお披露目が終わった所で、女子棟へと移動。二階の部屋は私だけだったので、まずは私の部屋からという事になった。
「あの…本当何も無くて恥ずかしいんだけど…。」
あるのは、校長先生からもらったベッドと机のみ。それを見て皆が意外と声を漏らした。
「玲奈ちゃんって、なんかこう、女の子!って感じだから部屋もそんな風なのかと思ってたんやけど、意外とシンプルなんやね!」
「…えっと、その。」
記憶もなく、以前住んでいた家は両親が殺害され、その後どうなったか知らない。だから、私が持ってこれる物はなかった。けど、それをどう説明すべきなのか分からなかったし、説明する必要性があるのかも分からなかった。素直に全て話してしまえば、敵連合のアジトから発見された私は、きっとクラスで浮いた存在になってしまう。その出来た蟠りを解く術も分からない。
「玲奈ちゃんは昔からこういう部屋だったよね。」
「え?…あ、うん。」
「あー爆豪と幼馴染みって事は緑谷とも幼馴染みなのか!」
それが事実なのか、両親の死を知っていて私に気を遣ってフォローして、そう緑谷くんが言ってくれたのか私には判断がつかなかったけど、今は緑谷くんの言葉に頷くしかない。そう思い、同意の言葉を発した。
「んじゃあ次は三階だな!」
上鳴くんを先頭に、私の部屋から出て行った皆。それに続いて出て行こうとすると、緑谷くんに呼び止められた。