第4章 欠落した記憶
結局、爆豪くんの部屋の片付けを手伝わさせては貰えず、それが終わるまで私はただ黙って爆豪くんが部屋を片付けるのを見ていた。そして部屋の片付けが済んだ所で漸く爆豪くんから解放された。
「お、いたいた!」
部屋を出てすぐに今朝爆豪くんからお金を受け取っていた切島くんと呼ばれていた男の子に呼び止められた。
「緑谷から聞いたよ!爆豪と緑谷の幼馴染みなんだってな!俺、切島鋭児郎!よろしくな!」
握手を求められ、その手を握り返した。朝からずっと爆豪くんと二人きりだったから凄く緊張していたせいもあってか、その屈折のない笑顔にホッとした。その笑顔から人柄の良さが伺える。
「今から部屋お披露目大会すんだけど、橘もどう?」
「部屋お披露目大会…?」
「そうそう!皆の部屋順番に見て、誰の部屋が一番か決めるんだ!」
折角編入してきたのに、私はまだまともにクラスの誰とも話せていない。皆と仲良くなるいい機会だと思い、私はそれに頷いた。
「んじゃー皆下にいるから行こうぜ!」
もう一人の幼馴染みである緑谷くんにも記憶がないから貴方の事を覚えていないと伝えなければならない。そう思いながら切島くんと共に皆のいる共同スペースへと向かった。