第4章 欠落した記憶
そして、全生徒が入寮を迎える日がやって来た。ドキドキしながら相澤先生に名前を呼ばれるのを待った。
「あともう一つ。今日からお前らと一緒に勉強する事になった転入生だ。」
「初めまして、橘玲奈です。宜しくお願いします。」
そう言って頭を下げ挨拶をしたが、歓迎されていないのか皆の表情は暗かった。そして、その生徒の中に、一人見覚えのある人物、爆豪くんがいた。
「以上!さっ!中に入るぞ。元気に行こう。」
そう言って相澤先生は一人寮の方へと歩き出した。元気に行こうとは言ったが、皆お葬式のような雰囲気で、元気にやっていけそうな雰囲気じゃない。そう思いながらその場に立ち尽くす私。すると爆豪くんがクラスメイトの一人を捕まえ、茂みに連れていった。その茂みからビリビリと電気の流れるような音がすると、爆豪くんに連れられたクラスメイトが、うぇーいと親指を突き立て出て来た。それを見てクラスメイトが笑い出す。
「切島。」
「んあ?」
爆豪くんは怖い表情で手にした札束を切島くんという男の子に差し出した。
「え、怖っ何カツアゲ!?」
「違え。俺が下ろした金だ!いつまでもシミったれられっとこっちも気分悪ィんだ。いつもみてーに馬鹿晒せや。」
事情は良く分からなかったけど、爆豪くんの取った行動のおかげでクラスの雰囲気は明るくなった。
「玲奈ちゃん!」
顔にそばかすのある男の子に声を掛けられ、手を握られた。
「無事だったんだね…!良かった…本当に良かった!」
涙を浮かべそう言ってくれる彼の事を私は知らない。でも、その言葉や表情から察するに、彼は以前の私を知ってる人なんだろう。