第1章 ヒーローなんていない※
小学生になってからもかっちゃんといっちゃんは相変わらずだった。かっちゃんといっちゃんは近所の市立小学校へ進学。私は少し家から離れた私立小学校に入学し、二人と離れ離れになった。とは言っても、家は近所。会おうと思えばいつでも会えるし、会おうと思わなくてもいつでも会えた。でも、大きくなるにつれて昔みたいに一緒に遊ぶ事は無くなった。
そして、小学校卒業と同時に、私は春から通う中学校の近くへ引っ越した。いっちゃんはお別れを言いに来てくれたけど、かっちゃんは会いに来てくれなかった。まあ、引っ越すと言ってもそう遠くないし、いつでも会いに来れる。
中学三年生になり、進路を悩んでいた。きっとかっちゃんは雄英に行くだろうな。でも、私の個性じゃ雄英の実技試験を受かる事は出来ない。でも、偉大なヒーローには雄英卒業が絶対条件。オールマイトを越えるヒーローになるかっちゃんの相棒(サイドキック)になりたいのなら、私も雄英卒業でなければならない。
そんな事を悩んでいる中起きた事件。かっちゃんが敵(ヴィラン)に捉えられるという事件が起きた。偶然この街に来ていたオールマイトの活躍によりかっちゃんは救出された。かっちゃんの危機だと云うのに、何も知らずにのうのうと生活していた自分が憎かった。しかもそれを知ったのもかっちゃんの口からではなく、ニュースを通して知ったのだ。かっちゃんの身を心配し電話をかけたが、凄く怒られた。でも、かっちゃんの元気な声を聞いて安心した。久しぶりのかっちゃんとの電話は一方的にただ怒られただけだったけど、それでもかっちゃんと話せた事が嬉しかった。
そのヘドロ事件から約一ヶ月後、私の人生を大きく左右する事件が起きた。夜、激しい物音で目が覚めた。何事かと音の発信源であるリビングへ向かうとそこは血の海だった。血だらけになり床に倒れる母。何者かによって首を締められている父。
「玲奈…逃げ、」
お父さんの首を絞める何かがコチラを見てにやりと笑った。その光景に足がすくみ動かない。
「見つけた。」
お父さんの首を締めていた何か────敵(ヴィラン)が、私に覆いかぶさったと同時に私は意識を失った。