第1章 ヒーローなんていない※
家が近所で、同い年のかっちゃんといっちゃんとは所謂幼馴染みというやつで、かっちゃんの個性が目覚めるまではよく三人で遊んだものだった。元々ガキ大将だったかっちゃんは、個性に目覚めてから、その勝気で強気な性格に文字通り火がついて、弱い者イジメをするようになった。特に個性が中々目覚めないいっちゃんに対しての当たり方は酷かった。同じく、私も中々個性に目覚めなかったが、私が女の子という事もあってか、いっちゃん程は当たりが強くなかったと思う。でも、苛められてるいっちゃんを庇うと、かっちゃんは頗る機嫌が悪くなって、四歳の私はそれが酷く怖かった。でも、かっちゃんが本当は優しいことも知っていたし、今までの思い出もあったし、嫌いにはなれなかった。というか、初恋の人をそう簡単に嫌いになる事は出来なかった。
それから暫くして、いっちゃんは病院で無個性であると診断された。その結果をいっちゃんのお母さんから聞いた母は、私を連れて病院へ行った。そこで私も無個性だと診断されるのだと思ったのに、私の個性は無個性ではなかった。
〝記憶操作〟
それが私の個性の名前だった。電気を操る父に、人の心を読む母。その二つの個性から生まれた複合的個性。非常に珍しい個性と言われたが、その個性が一体何の役に立つのだろうか。そんな個性じゃオールマイトのようなヒーローにはなれない。自分の個性が地味でヒーロー向きじゃないと知り、私は落胆した。女の子である私だって人々を笑顔で救うヒーローには憧れるのだ。いつしかオールマイトを越えるヒーローになるかっちゃんの相棒(サイドキック)として隣に立つのが私の夢だったのに、私の個性ではかっちゃんの相棒(サイドキック)は愚か、ヒーローになる事すら難しそうだ。