第4章 欠落した記憶
「久しぶりだね。」
そう言って病室に入ってきたのは先程の警察官と喋るネズミ…?
「ネズミが喋った…!」
「その反応懐かしいなあ。初めて会った時も君はそんな風に驚いてたよ。まあ、私に初めて会う人は大抵そんな反応をするけどね。まあ、何はともあれ、君が無事で良かった。橘くんが亡くなったと聞いた時は心を酷く痛めたよ。いつかこうなる日が来るのではないかと思っていたがね。聞いたところによると、なんでも記憶がないんだってね?」
喋るネズミの言葉に私は頷いた。
「君の父親は雄英のヒーロー科の出身で、母親は普通科出身なんだ。」
「私のお父さんはヒーローだったんですか?」
「優秀な生徒だったよ。誰もが君のお父さんは凄いヒーローになるだろうと思っていたと思うよ。それは彼自身もそうだったと思う。」
そう言って喋るネズミは話を続けた。私の母は〝読心〟という、とても珍しい個性を持っていたらしい。そんな特殊な個性を利用しようとする敵(ヴィラン)から狙われる事も少なくなかった母。それを保護という形で雄英の普通科に特別枠として入学。なんでも、珍しい個性を持った人々を敵から守る為に取り入れている制度で、公にされていないらしく、そんな制度の存在を知っているのは雄英の先生と一部のプロヒーロー。そして当事者とその一親等の家族。そんな母を守る為に父はヒーローとして多くの人を救う道を諦め、愛する人だけを守る道を選んだという。
「なんでそんな大事な話を私に…?」
「君もその特別枠に入る予定の生徒だったからだよ。」
そう言われても、全然ピンとこない。雄英の制度の件もそうだけど、顔も名前も思い出せない両親の話をされても、何の感情もわかない。