第6章 爆豪くんのいない四日間
それから見た記憶はいつも緑谷くんが爆豪くんに一方的に暴力を振るわれてる記憶。そしてその度に二人の間に入って行く私。緑谷くんを庇いながらも、昔の私の気持ちは確実に爆豪くんに向いていた。そして、爆豪くんも暴言は吐けど、私に手を上げる事は一度として無かった。幼稚園の頃は喧嘩をしながらも一緒に過ごす記憶が多かったが、年を重ねる事に私と緑谷くんの共通の記憶に爆豪くんの姿は殆ど無かった。
『こないだ空手の大会準優勝だったって聞いたよ。教えてくれたら応援に行ったのに。』
『最近習い事ばっかでいっちゃんとまともに話せなかったから言うタイミング逃しちゃって。また今度大会出る時は応援来てくれる?』
『勿論だよ!玲奈ちゃんは本当に凄いな…。』
『私なんてまだまだだよ。…ヒーローになる事諦められなくて、ただ足掻いてるだけ。ヒーロー向きの個性じゃないってのは自分でもよく分かってるんだけど、どうしても諦められなくて。』
『玲奈ちゃんの個性は凄い個性だと思うよ!』
『ありがとう。私、頑張る。出来る限りの努力はするつもり。だからいっちゃんも諦めないで一緒にヒーローを目指そう。』
無個性の緑谷くんに対して酷な言葉を掛けた。けど、緑谷くんはその残酷な言葉に嬉しそうに頷いてくれていた。
『最近かっちゃんとは会ってるの?』
『引っ越してからは全然。かっちゃんは元気?』
『うん。かっちゃんは昔と変わらずって感じだよ。』
『私もかっちゃんといっちゃんと同じ中学行きたかったな。セーラー服可愛いしね。あ、そろそろ帰らないと。また学校の話きかせてね。』
学校の話、なんて言いながら私が緑谷くんに尋ねるのは爆豪くんの事ばかり。私に爆豪くんの事を尋ねられるのを知ってか知らずか緑谷くんが話すのも爆豪くんの事ばかり。
『…っ!なんで!?なんで玲奈ちゃんが…!』
両親が敵(ヴィラン)に殺害され、私が行方不明と流れたニュースを見て緑谷くんはテレビの前で声を上げて泣き崩れていた。