第6章 爆豪くんのいない四日間
「えっと…聞きたい事っていうのは?」
「私にお兄ちゃんがいたかどうか知りたいんだけど…。」
「玲奈ちゃんは一人っ子だよ。」
耳郎さんとのやり取りで無意識に出た言葉。何か思い出してるのかも知れない。そう思ったけど、ただの思い過ごしだったみたいだ。あっさりと兄の存在を否定された。
「…そっか。えっと、じゃあ…緑谷くんが嫌じゃなければ、緑谷くんの記憶を見せて欲しい。」
「僕の記憶?」
「知りたいの。緑谷くんの知る昔の私の事。記憶を失う前の私はどんな子で、どんな風に生活してたか。」
他人の記憶を見るという行為は相手の秘密に触れるという事。知られたくない部分や忘れてしまいたい過去を強制的に覗き見てしまう。
「私にとっての記憶を覗くって言うのは、パソコンと同じで、記憶がフォルダに入ってるイメージなの。だから記憶を見せてもらったからって緑谷くんの過去の事全てを見れるわけじゃない。誰だって人には知られたくない事とかあるだろうし、個性とは言え、凄く気持ち悪いと思う。けど…私は知りたい。ちゃんと過去と向き合って記憶を取り戻したいの。こんな事頼める人、幼馴染みの爆豪くんと緑谷くんだけだから。」
必死になって記憶を見せて欲しいと懇願する私を緑谷くんは気持ち悪いと思っただろうか。けど、今の私が頼れるのは幼馴染みの二人だけだ。
「玲奈ちゃんがそれを望むなら。」
断れる覚悟で言った言葉に緑谷くんは頷いてくれた。
「…ありがとう。」