第6章 爆豪くんのいない四日間
その後特に体調が悪いというワケではないが本調子が出ず、授業に全く身が入らなかった。
寮に戻ると殆どの生徒が共有スペースで過ごす中、私はいち早く自室へと戻った。
部屋に入り、雄英に編入した時、校長先生にいただいたノートパソコンを起動させた。
〝橘玲奈〟
検索ワードに自分の名前を入力し、Enterキーを押した。過去、両親が殺害され行方不明になったとされる私。検索すれば過去の事件が引っ掛かると思い、パソコンに表示された記事を眺めた。両親が殺害され、娘が行方不明と似たようなワードが幾つも並んだ。私の行方を探す為に中学生時代の私の写真と思わしき物がネット上に掲載されていた。インターネットに掲載されている情報は以前校長先生から聞いた話と殆ど同じで新たに得られた情報は無かった。そして私の名前を検索すれば必ず出てくる名前〝ポッチャマン〟。彼の名前が表示されるのを見る度に何故か胸がザワつくような気がした。もしかしたら彼について調べたら何か思い出せるかもしれない。命を落としてまで私を救おうとしてくれたヒーローなのだから。そう思い、彼が生前行っていたヒーロー活動の動画をクリックした。ふくよかな体からは想像出来ない素早い動き。撮影者もその動きを捉えられていない。敵(ヴィラン)のものと思われる呻き声。骨の軋むような鈍い音。ポッチャマンの姿をカメラが捉えたのは敵(ヴィラン)を制圧した後だった。たった一人で五人もの敵(ヴィラン)を相手に人々を救った。これがポッチャマンのデビュー戦だった。人々の歓声に振り返り、笑みを浮かべるポッチャマンに背筋が凍るような感覚がした。
『皆、安心してくれ。もう大丈夫だよ。』
此方に向かって笑いながらそう言ったポッチャマンを見て、私は体制を崩し、椅子から落ちた。…知っている。私はこの声をよく知っている。何度も何度もこの声を聞いた。私の頭の中で厭らしい笑みを浮かべながら私に跨る影の声と同じ。
「…あ…ああ…。き、…たな、い。きた、な…い。…汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。汚い。」