第21章 ヒューマンオークション会場
『魚人だってちゃんと生きてるの!差別を受けたら悲しむ気持ちだってあるんだよ!そんな目で見るな!』
カナエは女の胸ぐらを掴んだまま手を前後に動かしている。女はガクガク揺れていた。
「やめてぇ~~!」
「カナエ!よせって!」
「カナエさん!」
ペンギンやシャチも止めようとするがカナエは聞いていない。
『人間に歩み寄ろうとしてる魚人だっているのに!あんた達がそれじゃ何も解決しないじゃん!!ハチが気持ち悪い!?お前の方が気持ち悪いんじゃ!化粧濃いんだよクソバ……』
「カナエ!もう止めてっっ!!言いたい事は分かるけど、キレると言葉遣いが汚くなるのは悪い癖だよ!普段が良いとは言えないけど……」
確か、シュルティと言い合った時も酷かった。最後の暴言を吐く前にベポが止めてくれた。
女は頭を振られ過ぎて、目を回している。
『はっ!ごめん……けど、一言多い……。』
カナエは自責の念に苛まれていた。
こちらに来てから、自分はどうも感情の起伏が激しくなったようだ。
元の世界では自分をさらけ出す事は無かった。
波風立てない様に自分を押し殺してたのに。
(止めてくれる人がいるって分かってるから………クマか。どっかで安心しちゃってるんだな、私………)
これはいかん。ただの厄介者になってしまう。
『ほんとにごめんなさい。嫌わないでね……』
「嫌いにはならないけど、よく考えてから喋ってね!俺がハラハラしなきゃいけないから!」
『以後気を付けます。』
「よしっ!」
「クックックッ」
カナエを見ていると退屈しない。ローは何とも愉快そうに笑っていた。
女の旦那が何をするんだと言い掛かりをつけてきたが、ローが凄むと押し黙ってしまった。
ナミ達はその様子を後ろから見ていた。カナエがあまりにも大きい声で怒鳴っていたので、騒ぎの中でもその存在に気付いていた。
「あの子、凄い怒ってた…!ハチの為に?」
「あの麗しきレディがハチの友達だってのか?」
「あの小娘なかなかスーパーじゃねェか!」
「ルフィが行っちまったぞ!?」
「ところでお前らここで何してるんだ?ハチは何であんな目に遭ってる?」
突然連れて来られたゾロは現状が把握できていない。
ハチは人間に罵られ続け、物を投げられていた。