第42章 あと、3日。
「そうか……。」
『ごめんね、せっかく綺麗なドレス貰ったのに。他に服も無いし……。』
ワンダが少し俯いた。
何だか悪い気もするが、こればかりは譲れない。
「では、こうしよう!」
『え?』
ワンダの顔が一転、名案でも浮かんだかのように輝き始めた。
「ここにいる間だけという事にしておこう!それなら良いだろう?預かっていくぞ!」
『え?あ、うん。え?』
ワンダはそう言うと部屋から出て行った。
えーと、とカナエは考える。
つなぎを持って行かれた。大事な服だと言ったのに。
『あまり人の話を聞かないタイプか……。そんなキャラだっけか?』
まあ、ゾウにいる間だけの交換であれば、いずれ自分の元へ返ってくるから問題ない。
他に服は無い。
『うーん、少なくともあと3日……。』
ずっとこの格好という事か。
洗濯も、食事の準備も、寝る時だってそうだ。
『優雅な貴族か何か、私は。』
ドレスを着ていてもおかしくない場所なら良いが、ここは森の中だ。
そして、カナエは貴族ではない。
高価なドレス。
国宝だという装飾品。
これは、ミンク族の感謝の気持ち。
『よ、汚さないように気を付けないと……。』
勝手にプレッシャーを感じるカナエ。
だが、今考えるべき問題はドレスの扱いではない。
死の外科医の事だ。
奴が来るまで、あと3日。
顔を突き合わせて、ちゃんと聞きたい事が聞けるだろうか。
もしかしたら、自分が聞く前にイッカクが問いただすかもしれない。
意外な顔があっても、イッカクが気の強い女には違いないのだ。
『お似合いかもなぁ……。』
イッカクの意外な一面。
女から見ても可愛いと思った。
ローもそこに惹かれたのだろうか。
はあ、と溜め息をつく。
ゾウ来てから、もう何度目だろう。
『…………ホントに綺麗だな。』
溜め息と同時に足元に顔を向けると、ベージュのドレスが美しく輝いていた。
誰かが言っていた。
女は綺麗に着飾ると強くなる。
服は女の鎧だと。
これを着ていれば、少しは勇気が出せそうだ。
もっと自分に自信を持とう。
目を見て、自分の口で。
くだらねェと言われようが、
誰かに、昼ドラか!と言われようが。
はっきりしやがれコノヤロー!!
と、本人に直接聞いてやるのだ。