第21章 ヒューマンオークション会場
《この男は名をラキューバ!!繊細な計略家として知られた海賊なのです!》
ラキューバは絶望を顔に浮かべていた。大きな野望を胸に海へ出たはずが、奴隷として人に売られる。
(あ………この人って確か………)
カナエは思わずローの腕を掴んだ。
自分は恐ろしいものを目にしてしまう。
「どうした………」
「キャー!!」
「うわっ!!どうしたんだあいつ………!!」
人に飼われて悲惨な人生を歩むなら………
『っっ!!』
カナエは顔を背けた。
ラキューバは舌を噛んだ。口から血を流し倒れてしまった。
不測の事態にステージの幕が引いていく。
「おい。平気か?」
『ごめん……自分でついてきたのに……』
軽い気持ちでここに来てしまった。知っていた事とは言え、こんな事が目の前で起こるのは辛い。
深く溜め息をついているカナエを見て、ローは顔に腕をまわしてきた。目と、耳を隠す様に。
「こうしていれば、何も見えねェし、何も聞こえないだろ。」
『………………………うん。』
「惚れ直したか?」
惚れ直したよ。このやろ。
でも。顔は見えないけど、この声はきっと口角を吊り上げてドヤ顔で言っているに違い無い。ちょっと腹立つ。
『………………手慣れてるね。』
「てめェ………」
青筋を立てながらも、腕はそのままにしてくれた。
(ありがと。)
そんな二人を後ろからキッドが見ていた。苛立ちを全面に押し出している。
「くそっ!見せつけやがって!!」
暫くして、ステージの幕が再び開いた。ラキューバは鼻血を吹いて倒れたという事になっていた。それに笑っている者がいる。呑気な奴等だ。
そんなトラブルを忘れさせる為、ディスコは”超目玉商品”を紹介すると言う。
《魚人島からやって来た!!!”人魚”のォ
ケイミ~~~!!!》
『!!』
カナエはローの腕を退け、ステージを見た。巨大な金魚鉢の様な水槽に入れられたケイミー。勿論、首輪で繋がれている。
客席はどよめき、本物だ、若い人魚だと、多くの人間の目が血走っていた。
カナエは慌ててVIP 席を見ると、先程から既に一人天竜人が増えていた。
『あ………………!』
「5億で買うえ~~~!!!
5億ベリィ~~~~~~~~~~~!!!」
会場に勘に障る声が響き渡り、客席は静まり返った。