第21章 ヒューマンオークション会場
「何しに来た。」
「あァ?………トラファルガーお前もいたのかよ。」
「当たり前だ。」
「そんな怖ェ顔するんじゃねェよ。ただの見物だ。ついでに面白ェ奴がいたら買っていこうと思ってな………ハハハッ!」
(このセリフ聞いた事ある………)
しかし、ここでこの二人が会話する事は無かった。後ろにはキッド海賊団とハートの海賊団が並んで座っている。おかしい。
(何この絵面………。まぁ、たいした変化じゃ無いか……)
ふと、キッドを見ると何とも言えない哀れみの目をカナエに向けていた。
『え………何ですか?』
「お前………なんて格好してんだよ。」
カナエは上半身ボロボロのつなぎの袖を腰で縛り、白いTシャツを着ていた。大事なつなぎをどうしても着ていたかった結果、清掃員の様な格好になってしまった。
『あんたのせいでしょ!』
「俺の女になれば服なんて、いくらでも買ってやるぞ。」
『だから、ならないってば!』
「キッド、天竜人だ。少し黙っていた方が良い。」
後方の入り口に天竜人が現れた。オークション会場では膝つき等の作法は無礼講となっているものの、騒いでいれば目をつけられる。
一行は、天竜人がVIP 席に行くのを静かに見ていた。
(腹立つ顔………)
「おい、カナエ。ちょっとこっち向けよ。」
『!?』
天竜人が通り過ぎた後、突然キッドがカナエの顎を掴んだ。
「ユースタス屋……死にてェのか。」
「キャプテン!落ち着いて!ここで暴れちゃ駄目だよ!」
「………………」
キッドはカナエの首に貼ってある絆創膏を凝視して、何を思ったか勢い良く剥がしてしまった。
『痛い!』
絆創膏の下には、昨日の夜ローがつけた真っ赤な痣。見られたら恥ずかしいので隠していたが、勘付かれてしまった。
「昨日は何も無ェって言ってたのになぁ………昨日の夜ヤったな?」
『ヤったとか言わないでよ………』
「ユースタス屋」
ローはキッドの手を払いのけ、カナエを引き寄せた。腕はカナエを優しく包んでいるが、目はキッドを殺す勢いだ。
「二度とこいつに触るんじゃねェ。」
「あァ?」
カナエの頭の上でバトルが始まった。