第17章 ちょっと借りるぜ。
「ぐはっっ!!!」
(いっ………いきなりこの大技!?キッドが死んじゃうんじゃ………!!)
ここでキッドが死んでしまうと、この先の話はどうなるのか。
だが、カナエの思いとは裏腹にキッドは口から煙は吐いているが、倒れてはいない。
「やってくれるじゃねェか……!!トラファルガー!!」
「チッ……効かねェか!!」
良く見ると、ローは既に息が上がっている様に見える。先程のキラーとの戦闘でかなり体力を消耗したのか?
攻撃が効かなかったのは、まだルーキーと呼ばれている時だから技が磨かれていないのかもしれない。
どちらにしても、このままではローが負けてしまいそうだ。
何とかこの戦いを止めなければ。
『キッド!!さっきも言ったでしょ!!こんな所で油売ってる場合じゃ無いってば!!』
「………あァ!そうだったな!!」
キッドは金属に覆われていた腕を、すんなり元に戻した。ローは二人のやり取りが気に食わない。カナエの言葉にキッドが素直に従った。
「なに仲良くなってんだよ……てめェら……!」
『ローも落ち着いて!ここは海軍本部に近いんだから!!騒ぎを起こしたらまずいって!!』
「チッ………」
「キッド、その通りだ」
キラーがダイスケの瞬間移動でキッドの前に現れた。今の騒動を海軍が聞きつけて、こちらに向かって来ているらしい。億超えのルーキーの衝突。中将クラスの海兵を見かけたとダイスケが言っている。
「トラファルガー とここで揉めるのは得策じゃない。その女は諦めろ!さっさとずらかるぞ!」
「分かったよ!だが、一旦引くだけだ。カナエ!お前をラフテルまで連れて行くのは俺だ。分かったな……絶対俺の女にするぞ!!」
『だから、嫌だってば!!』
キッド達はそのまま消え、辺りは急に静まり返った。
「何なんだよ………あれは!」
『キッドの部下に私と同じ人がいて……血の力だって言ってた………行っちゃった………良かった………』
カナエは張り詰めていた緊張の糸が切れ、その場に崩れ落ちてしまった。
「おい!」
ローが慌てて駆け寄ると、カナエは青褪め、ガタガタと体を震わせていた。
(怖かった……嫌いな人じゃ無いけど……実際に目の前にして、あんな事されたらやっぱり怖い……)