第18章 言ってなかったか。
「………」
カナエのいつもよりも更に小さくなった姿を見て、ローは自分の未熟さを恨んだ。
もっと強ければ、マスク男の動きに気付いたかもしれない。カナエもこんな目に遭わなかった。
「すまねェ……俺がいながら………」
ローはカナエの腕のロープをほどきながら、消える様な声で言った。
カナエは後ろを振り向くとローは下を向いていて帽子で表情が良く見えない。でも、歯を食いしばっているのが見えた。胸が締め付けられる。
船で大人しくしていれば良かった。
ローに迷惑をかけてしまった。
『大丈夫!』
「!?」
『私は生きてるし、ローがこうやって助けに来てくれたから大丈夫!そんなに乱暴もされて無いしね!気にしないで!』
カナエは何とか笑顔をつくっているが、無理をしているのは明らかだった。体の震えも止まらない。
「じゃあ、あの服は何なんだ。」
『あーえっと……その………』
どう見てもボロボロ。言い訳が思いつかない。
するとローはカナエに近づき、優しく抱き締めた。
「強がるんじゃねェよ。お前の事だから、力じゃ敵わなくて口答えしてたら、無理矢理脱がされたんだろ。」
『ごもっともで………』
「怖かったんなら泣け。」
『………………………………泣かない。』
「可愛くねェ」
『可愛くなくて良い。………………泣いたら負けになる………』
「………」
『でも、あの………しばらくこうしてて欲しい………です。』
「あァ」
ローの心臓の音がする。大きな手で頭を撫でてくれた。少し経つと体の震えは止まった。ローの優しい腕に包まれていると何だか安心する。
うん。もう大丈夫。
「とりあえず、ここから離れなきゃいけねェ。動けるか?」
そうだ。海軍がここに向かっている。のんびりしていられない。
『もう大丈夫。』
「お前………服着ろ。」
『え………………………はっ!!!』
カナエは今、タンクトップ一枚しか身につけていない。
「今度は俺が襲うぞ。」
『早く言って!!!』
カナエは、慌てて床に落ちていたつなぎを着た。上半身の部分はボロボロだったが、腰で袖の部分を縛ったら何とか形になった。
「これも着てろ。」
ローは自分が着ていたハートの海賊団のマークが入ったパーカーを貸してくれた。