第17章 ちょっと借りるぜ。
『あっ!!』
キッドはカナエが着ていたつなぎを簡単に首元から引き裂いた。なんて力だ。
皆が、歓迎の証だと言ってプレゼントしてくれたのにボロボロになってしまった。
『何すっ……っ!!』
「今から可愛がってやるからよ……黙ってろ……!」
キッドはカナエの口を塞ぎ、長い舌で首筋を舐める。
(やだやだやだ!!!触らないで!!)
その時ふと、カナエの脳裏にその他大勢の船員達が浮かんだ。彼等に習った護身術。
それと一緒に人体の急所を教えてくれた。
しかし、今は手が縛られている。足も、キッドが乗っていて使えない。
(こうなったら!!)
「………!?」
キッドは、カナエの口を塞いでいた手に痛みを感じ、思わずその手を離した。
「てめェ!噛みやがったな!?」
(今だ!!狙うのは鼻の下………………人中!!)
「!!??」
キッドは顔面にカナエの頭突きを喰らった。
『………………っっっ!!!』
頭突きをした本人も当然痛い。
カナエは痛みを堪えながら、逃げるチャンスができたのかキッドの様子を見た。
「良い度胸してんじゃねェか………」
キッドは微動だにしていなかった。
(鼻血は出てるけど効いてなーい!!)
力でキッドに敵う筈が無い。
しかし、反撃してきたカナエに船員達は飛び掛かる勢いだ。キッドも、まさか頭突きをされるとは思っていなかったらしく、カナエを睨み付けている。このままでは殺される。
(こうなったら伝家の宝刀!!キッドなら、これを言えば何か反応があるはず!!)
『キッドさん!!』
「あぁ!?」
『私になんか構ってないで、さっさと新世界に入らないと他の海賊にワンピース獲られちゃいますよ!!』
「………………!」
キッドの顔色が変わった。目を見開いて、驚いている様に見える。
「キッド………この女………」
キラーや、他の船員もカナエの言葉に反応を示した。
それもそのはず。カナエはキッド達が今まで辿ってきた航路でワンピースの事を口にすれば笑われてきた事を知っている。
ワンピースを信じている事が分かれば、少しは油断するかもしれないと思った。
「お前………ワンピースがあると思うか。」
『あるに決まってるじゃないですか……』
その時、キッドは口角を吊り上げた。