第17章 ちょっと借りるぜ。
一体何がどうなっていると言うのか。
カナエは先程までシャボンディパークの近くにいた筈が、キッド海賊団と共に一瞬にして狭くて薄暗い部屋に移動していた。
『ん"ん"ー!!!』
カナエは両手を後ろで縛られ、大きなソファに座らされていた。口は相変わらず黒マスクの男に塞がれたまま。
「大人しくしていろ………」
黒マスクの男が静かに呟き、カナエの口を解放した。
すると、キッドは目の前にしゃがみ、1つ質問を投げ掛けた。
(間近で見ても極悪人顔!!凄い!!)
「お前の血の力は何だ?」
『!!………どうしてそれを!!』
「クククッ……素直じゃねェか………」
しまった。
でも、私が異世界の女かどうかなんて、キッドには分からない筈。船員達もこちらの側の人間の様に感じる。どうして分かったんだ。何で血の力を知ってる?
「ハハッ!納得いかねェって顔してるな。………おい」
「はい」
キッドが黒マスクの男に視線を送ると、男はマスクを外した。
『あっ………』
何で気付かなかったんだ。
男がマスクを外した瞬間、あのお爺さんに出会った時と同じ感覚を覚えた。
『私と同じ………?』
「そうだ。こっちで言う、異世界から来た」
「納得したか?トラファルガーと一緒にいたお前の存在にダイスケが気付いた。そんな無防備なままでいるから見つかっちまうんだよ!」
キッドはニヤつきながらカナエを見ている。人を見下した態度にカナエは気分が悪い。
『無防備……?どういう事ですか?』
「お前……何にも知らねェんだな……ダイスケ、教えてやれよ」
「これだ」
ダイスケが見せてきたのは先程まで着けていた、黒い革のマスク。
そういえば、このマスクを外した時に自分と同じ世界の人間だと分かった。
このマスクを着けると何が変わると言うのか。
「黒い物を身に着けると、血の力を感じられ難くなる。」
『し……知らなかった……』
カナエはマスクじゃ無くて良かったと安心した。
(あんなの着けてたら余計に目立つ……)
「………で?お前の血の力は何なんだよ?」
キッドはしつこく聞いてきた。それが目的でカナエを攫ったのは明白。
しかし、人の力を支配出来るなんて正直に話したら、何に利用されるか考えただけで恐ろしい。第一、力に目覚めてすらいない。