第17章 ちょっと借りるぜ。
「断る。」
「何だよ、まだ何も言って無ェだろ」
(頼みごと?それよりも……おかしいな………)
キッドの話も気になるが、カナエはここで既にローとキッドが接触している事が不思議だった。
(てっきり、オークション会場が初対面だと思ってた………)
「てめェの頼みを聞く義理は無ェ」
「ハハッ……まぁ、最初からてめェの了解を得ようとは思っちゃいねェよ」
『んーーっっ!!』
「!?」
カナエは何が起こったのか分からなかった。
いつの間にか背後に黒マスクの男が現れ、両手を後ろで掴み、口を塞いだ。さっきまでローに隠れていた筈が、今はキッドの後ろにいる。逃れようともがいても、黒マスクの男はびくともしない。
「何もつもりだ!!ユースタス屋!!!」
「心配すんな。悪い様にはしねェよ」
(怖い………!助けて………!!)
「ROOM 」
ローがサークルを広げ、愛刀・鬼哭を構えた。しかしキッド達は慌てる様子も無く、黒マスクの男に手を触れている。
ローが刀を抜こうとした瞬間だった。
「じゃあな。ちょっと借りるぜ。」
「!?」
急に辺りは静まり返り、カナエの呻き声も聞こえなくなった。
「消えた………!?」
一体どういう事だ。さっきまで目の前にいた。走り去った訳でも無く、跳んで逃げた訳でも無い。文字通り、奴等は消えた。
「あの野郎ォォ!!どこ行きやがった!!」
ローは怒りを露にし、その場を後に走り出した。
一方、ハートの海賊団の船員達は腕の良いコーティング職人を見つけ、既に仕事を依頼していた。
「思ったより早く見つかったな。」
「そろそろあの二人、迎えに行くか。」
「あっ!あれ、キャプテンじゃない?」
街の中を慌てた様子で走り回るローをベポが見つけた。ローも船員達に気付き、駆け寄って来る。
「キャプテーン!どうしたの?………カナエは?」
「攫われた!!」
「「「えェ!!??」」」
「一体誰に!?」
「ユースタス屋だ!!あいつら、ちび女を連れて目の前で消えやがった!!」
「きっ………消えた!?」
「どこ行ったか検討もつかねェ!とにかくお前らも捜せ!!見つけたら電伝虫で連絡しろ!」
「アイアイ!キャプテン!!」
「ユースタス屋!!見つけ次第ぶっ殺してやる………!!!」