第17章 ちょっと借りるぜ。
「ここは海軍本部が近い。お前に気付かれねェ様にしないといけねェな。」
そうだった。忘れてた。ナーニ・カール島のお爺さんが言ってた。海軍にも私と同じ世界の人間がいる。
こちらの世界に来て何か血の力を持ったなら、きっと海軍でも重宝されて特別な地位を与えられているだろう。そうだとしたら、海軍本部に常駐しているかもしれない。出会したら最後だ。
(あれ……でも待てよ……)
何かこの後、色々あって大将やら何やらいっぱい登場する………!ヤバい!!死ぬかも…!!!
はっ!!その前に私………………ルフィ達に会える!!!???
カナエはもう、自分が分からない。
「お前……よだれ垂らしてるぞ………」
『あっ………すいません………』
ローに不審な目で見られ、正気を取り戻した時には観覧車は一周を終えていた。
「お帰りなさ~い」
コーティング職人を捜しに行った船員達に追い付く為、シャボンディパークを後にし、途中で見つけたお土産屋でグラマン(グランドライン饅頭)を購入した。
ローも小腹が空いたと言うので二人で頬張っていると、突然数名の人影に行く手を阻まれた。
「トラファルガー・ローってのは…………てめェだな?」
『!?』
「だったらどうした………」
現れたのは、自分は海賊だと言わんばりの凶悪な顔をした男。
鍛え上げられた肉体に、首の周りに赤の毛皮をあしらった黒いコートを羽織っている。何よりも特徴的なのは、逆立った真っ赤な髪。カナエは彼の事を知っている。
『ユースタス・”キャプテン”キッド……!』
「俺を知ってんだな…女。」
懸賞金3億1500万ベリー。民間人にも被害を与える凶悪ぶりから、ルーキー達の中では1番の高額となっている。
キッドの後ろには船員達。先程見かけた、フルフェイスのマスクを被ったキラー。水色の髪に口を縫った様な顔をした男や、角の生えたマントを頭から被っている編みタイツの男。モヒカンにトゲだらけの革ジャンを着た者、真っ黒な長い髪を垂らし黒い革のマスクをした者もいた。
『ホントにパンクバンドみたいな人達……』
「なに言ってんだこいつ……」
「何の用だ…ユースタス屋……」
カナエを見ていたキッドの目線を遮るように、ローはカナエの前に立った。
「そう殺気立つんじゃねェよ。お前に頼みてェ事があって来たんだ」