第16章 シャボンディ諸島
『何の事ですか………むぐっ!』
ローはカナエの言葉を遮る様に、もう一度唇を重ねた。先程と同じ様に優しく。しかし、何度も何度も角度を変え、カナエに喋る隙を与えない。
『むんっ……もがっ………んー!!』
カナエが何とか口を動かそうともがいていた。
「お前……こんな時ぐらい黙ってろよ……」
『だって皆が見て………無い!あれ!?』
甲板はがらんとしている。
「気が利く奴等だろ」
(もーーー!!!)
その時、ローがまた顔を近づけてきた。カナエは、もうさせるもんかと両手でローの口を塞いだ。
「ひぇめぇ………………」
『………………………………………ぶっ!!』
あのクールなローが口を押さえられて、てめェと言えず、ひぇめぇと言った。カナエは思わず吹き出してしまった。可愛すぎる。爆笑したいところだが、それは失礼なのでカナエは必死で笑いを堪えていた。
「………………やっとで笑ったな。」
『へ?』
「お前は、俺の前で笑った事が無かった」
『え……そうでしたっけ?………さっき笑ったと思うんですけど………』
確かにカナエは笑っていた。それをローも見ていた。
「そう言う事じゃ無ェ……」
『………?』
あれは船員達、全員に向けられた笑顔。ローだけでは無い。
船員達に嫉妬した訳では無いが、ローはそれが気に入らない。ただの独占欲である。
何も言わないローの考えている事がカナエは分からない。気まずくなったカナエは先程の事を謝る事にした。
『………そう言えばさっき怒ってましたよね?あの………簡単にカッコいいとか言って………すいません……」
的外れである。
「何言ってんだ、てめェ。そんな事で怒る訳無いだろう。あいつらは喜んでた。俺はただお前が………」
俺だけの為に笑わないから。
と、言うのも今更恥ずかしい。
『いひゃい!!!』
「いいからお前はへらへら笑ってろ。」
ローはカナエの両頬を指で掴んで、強引に笑顔を作った。
「クックックックッ」
不細工になってしまったカナエを見て、ローは笑っている。
(もげる!頬っぺたもげる………!!)
もげそうになった時、ローは頬を解放してくれた。