第16章 シャボンディ諸島
漫画で見た時も凄いと思ったが、実際目の前にすると、やはり迫力が違う。
カナエは息をするのも忘れて、レッドラインを見上げていた。
『す………凄い!本当にてっぺんが見えない!!こんなの初めて見た………!!』
「リヴァースマウンテンを超えて、世界を半周した………感慨深いですね。船長。」
「あァ……!!」
「何か泣けてくる~!」
いつの間にか船員達が甲板に集まって来ていた。
ハートの海賊団はここまでどんな冒険をしてきたのだろう。カナエには想像もつかない。インターネットやテレビがあって情報が得られる世界では無い。それでも彼等は海を恐れず、未知の領域を航海してきたのだろう。己の目的の為に死をも覚悟して。
『凄い……!皆凄い!!カッコいいよ!!!』
彼等と一緒にいる事が誇らしい。カナエは心底そう思い、自然と出た言葉だった。
カナエは船に来てから見せた事の無い、満面の笑みを浮かべて船員達を見渡していた。
「………!カナエさん……やっぱ好………」
「シャチ!止めとけ!!」
フラフラとカナエに近づこうとしたシャチは、ペンギンに殴られた。
そして、ローは何故か不機嫌な顔ををしている。
(えっ!?何で!?私、誉めたんですけど!?)
「ベポ!シャチ!その他大勢!操舵室に戻るぞ!」
「えっ??ペンギン何で!?もうちょっと見ていたい………」
「いいから!」
船員達が全員操舵室に向かったが、カナエはローが恐ろし過ぎて気付いていない。
「………」
ローはカナエを上から睨み付けたまま近付いて来た。
『あのっ………私何かしました!?』
「………………」
(何で何も言わないのー!?恐い!!)
「お前………」
『何ですか………!!』
カナエは恐怖のあまり、ローの顔が見えない様に自分の顔を隠しながらおかしな戦闘態勢をとっている。
(また気に障る事言った!?来るなら来い!!)
すると、ローは顔を隠しているカナエの手を握り顔を近づけ、優しく唇を重ねてきた。
『!!??』
「その顔は………俺だけにしろ。」