第13章 航海の日常
「チッ…………」
俺の勘違いかよ。間抜けもいい所だ。
顔が見れねェ。
ローが本を読んで良いと言ったら、カナエは随分嬉しそうにしている。本当に好きな様だ。
『じゃあ、失礼します!』
「俺らしく無ェな………」
あんなちび女のどこが良いのか、ローは自分でもよく分からない。すぐ反抗してくるし、性格もひねくれている。
しかしカルロををぶっ飛ばした後、先にローが突っかかって言い合いになったのに、カナエは自分の事を反省していた。
馬鹿かあいつは。ひねくれてるんじゃねェのか。
あの時、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
そういえばあいつはコロコロ表情を変える。
俺にからかわれて、顔を真っ赤にして。
船員達と飲んで、楽しそうに騒いで。
俺と言い合って、あんなに怒って。
海や本を見た時は、あんなに目を輝かせて。
俺が触れると、あんなに濡らして顔を歪ませていた。
ん?
そう言えばあいつ、俺の前で笑ったか?
「………………」
さっきの、本を読んで良いって言った時だけか?
船員達の前では楽しそうにしている。特にペンギンにはよく懐いている様子だ。
俺は何をそんなに気にしている。あいつは長い付き合いの信頼できる船員だぞ。シャチは何をしでかすか分かんねぇが………
とにかく、あいつは年上の筈なのに目が離せねェ。放っとけねェ。
俺に溺れさせてやる、なんて言っておいて………
「どっちが溺れてるんだ。」
くそ。
まぁ良い。
あいつの細い首も
細い腕も
小せェ胸も
笑顔も
全て俺のものだ。
誰にも渡さねェ。
「今日のおにぎり、うめェな。」