第12章 覚悟しろ。
『サイテーだな私……死ねばいいのに……』
カナエは港に隣接している公園にいた。
街灯は少なく、暗い。
端の方にあったベンチに座り、真っ暗な海を眺めながら、自分の言動を後悔していた。
(私の考え方なんて、ローから見たら本当にくだらない……)
大きな夢、目的に向かって真っ直ぐに進んでいる人達。他人にゴマをすって、自分に嘘をつくなんて決して無いだろう。
(私に意見する資格なんて、無い。)
カナエがいた世界では、他人に気に入られようと必死な人間ばかり。口では良い事を言っても、胸の内では何を考えているか分からない。様々な人達と出会ったところで、社交辞令の様な会話をするだけ。本音でぶつかり合える仲間なんて、なかなか見つからない。
(何が……自分の世界が広がるだ……信じられる人がいなかったら、意味無いじゃん……)
『…………寂しいなー』
「何がだ」
『うわ!?』
背後にローが立っていた。僅かに息を切らしている。
(き……聞かれた……穴があったら入りたい……でも…探してくれたのかな。)
カナエはローから顔をそらした。
言いたい事だけ言って、逃げ出して来たのはつい先程の事。目なんて絶対合わせられない。
「ここにいたか。……その辺のチンピラにでも襲われてるかと思ったが。」
『1章の内に何回も襲われませんよ………』
「何を言ってる。」
『「………………………」』
(気まずい……でも、ちゃんと謝らないと……)
許して貰おうとは思わない。
船員達を馬鹿にする様な事を言った。
本当は羨ましいクセに。
彼等の事は知っていたが、実際に触れてみると本当に信頼し合っているのを感じた。
カナエは欲しくても持っていないもの。ただの嫉妬心から生まれた言葉だった。
『本当に……すいませんでした……』
「…………」
『私、本当は……船長さん達みたいにずっと 一緒にいられる仲間がいる事が羨ましいんです……』
「…………」
ローはカナエの横に座り、静かに話を聞いていた。