第12章 覚悟しろ。
『信頼できる仲間とか……強い絆とか……私のいた世界では、そんなのは……なかなか無くて……』
そんな人に出会う事ができたら奇跡だ。
『仕事仲間はいたけど、表面上の付き合いばかりで……心を許せる人はいませんでした。』
皆、人を疑うばかりで、彼等の様に純粋じゃない。
『仲良くしてても、何か寂しくて……どこかにそんな人がいないかと思っても……やっぱり、いなくて。』
ワンピース読んで、彼等の世界に浸って、現実逃避をしていた。本気で憧れた。
「慰めてくれる男がいたんじゃなかったのか」
『まぁ……彼氏はいましたけど、深入りして自分が見えなくなるのは嫌だったんで……あまりそういう事は話さなかったんです。』
「そうか」
(……何でローに人生相談みたいな事してるんだ、私は)
『とにかく、こんなちっぽけな女が口答えしてすいませんでした。私はこの町で何とかやっていきます。数日でしたけど……皆さんに出会えて、触れ合えて、すごく嬉しかったです。』
カナエは立ち上がって、ローにお辞儀をした。
一緒に航海できたら夢の様だけど、邪魔はできない。
『お世話になりました。』
「…………誰が船を降りていいと言った」
『え……』
「寂しいんなら船に乗ってろ」
『は?……あの、えと……そんな理由では……』
「あいつらは、もうお前を仲間だと思ってる。」
『そんな……たった数日で……』
いきなり現れて、掃除洗濯して、一緒に飲んだだけ。
「あいつらもバカじゃない。信用できる人間かどうかぐらいすぐ分かる。そうじゃ無けりゃ、お前が船に乗る事をとっくに反対してる。」
『……!……でも、だからといって私が船にいたら足手まといです。戦える訳じゃないし、血の力だって目覚めて無いから利用価値なんてありません……!目覚めたって海軍に追われるだけです!』
そんな事になったら、ローの目的が遂げられない。
「俺がいる。」
『……へ?』
「間の抜けた声出すな。誰がお前を狙ってきても俺が守ってやる。」
『そ……そんなに血の力が必要なんですか?』
確かに、人の力を支配するなんて敵には有効かもしれない。
「俺が欲しいのは血の力じゃねェ。」
『……?』
「お前が欲しいんだ」