第2章 現実逃避しよ。
カナエは帰りの電車の中で考え事をしていた。
シャボンディ諸島の辺りからかな…
昔ほど読み返さなくなったのは。
いったい何年の間、仕事ばかりの毎日だったのか。
それなりに真面目に頑張ってきたけど、情熱を注いでいる訳でもない。
淡々と仕事を続けていたら、人員の入れ替わりが激しい部署ではすでにお局様状態。
この歳で。くそぅ…
色々と指示を出したり、教育したりしなければいけないのだが、迫力に欠けるこの見た目だと、イマイチ説得力が無く若い子達は言う事を聞いてくれない。
そして私が上司に怒られる。
でも、本気で頑張っていない私は まぁいいか と思う。
恋もそれなりにしてきた。
何年も付き合う人もいれば、たった数ヵ月で別れてしまう人も居た。
大抵、私の気持ちが冷めてきたなと思うと相手も少しずつ離れて行き、自然消滅に近い形で別れてしまう。
溺れる様な恋なんてした事無い。
『薄っぺらいなぁ』
この歳になると、若い頃みたいに可愛いげが無くなってくるし、それよりもこの色気の無い、どこも出ていない身体じゃ誰も誘ってくれないかも…
『…』
『…』
『決めた!連休は何にもしない!ワンピース全巻読み返す!!』
何だか悲しくなってきたカナエは現実逃避する事にした。
『洗濯はしよう…』
あまりにも大きい独り言にまわりの乗客は引いている。