第10章 ナーニ・カール島
『わ~!前も後ろも全部海!!』
ハートの海賊団の潜水艇ポーラータング号は現在浮上している。
カナエは、大量の洗濯物を干す為、甲板へ出ていた。
こちらの世界に来てから3日。先程までは潜水が続いていた為、カナエにとっては初海上である。
波は穏やか。天気は快晴。
『んー!気持ち良い!こんな事、なかなか経験できないな。』
カナエは洗濯物を干し始めた。
ローはあれから特に変わった様子はない。思いっきり突き飛ばして、怒っているかと思ったが、カナエに対して特別な態度をとる事もなかった。
(ちび女呼ばわりも変わらないし……やっぱり気の迷いだったか。)
クールで冷静なローでも、長い航海で女に飢えていたら男の本能は押さえられない。
そうじゃ無かったら、この貧弱なちび女に欲情なんてしないだろう。
カナエはそう思う事にした。
(それはそれで、悲しくなってきた……うぅ。私って魅力無い……)
カナエはネガティブ全開モードになった。
「カナエーやってるか?……って、何泣いてんだ!?」
『ペンギンくん……ばんべもばいっっ』
「何言ってんのか分かんねェよ……」
ペンギンは泣いている理由がよく分からなかったが、とりあえず頭を撫でておいた。
「この量じゃ大変だろ。手伝うよ」
『えっ…いいよ。ペンギンくんの仕事があるでしょ?』
「一区切りついたから来たんだよ。手伝わせろって。」
『うぅ…ありがとうお兄ちゃん』
カナエはまた泣き出した。
「気にすんなよ。妹。」
「あーー!!ペンギン!!抜けがけすんなよ!!」
「何の話だ…。」
シャチも手伝ってくれたおかげで、カナエの仕事が早く終わった。