第42章 あと、3日。
部屋に入ると着替えの準備が始まった。
カナエがつなぎを脱いでドレスを着ようとすると、これは邪魔だ、とワンダにブラジャーを剥ぎ取られてしまった。
肩紐が見えてしまうからだろうか。
確かにそれはみっともない。ドレスは美しく着こなさなければ。
ワンダが手伝うと言うので、されるがままにドレスを着せて貰ったカナエ。
『ど、どうかな……。』
「美しい!サイズもぴったりだ、良かった!」
ワンダはとても嬉しそうだ。
着なれないドレスは肩や背中がスースーするが、たまにはこんなのも良い。
少し照れくさい。
だが、ローにも見て欲しい、なんて女心が過ったりもする。
どんな顔をするだろうか。
『…………ん?背中?』
背中が、やけに涼しい。
恐る恐る自分の背中に手を回してみた。
直接触れる感触。
嫌な予感がして手を腰の方まで下げてみたが、ある筈のものが無い。
『背中がっつり開いとるーーー!!!』
背中が丸見えなだけではなく、腰のライン、お尻の割れ目が見えそうな、ギリギリの所まで大きく開いたドレスだった。
ブラジャーを剥ぎ取られた理由はこれか。
『ワンダ!こんなの聞いてない!』
「気に入らなかったか?では、さっきのドレスに……」
『えっ、あっ、それはちょっと……!これ!これで良いよ!気に入ったから!』
背中は諦めよう。
ご機嫌なワンダは国宝だという装飾品をカナエにつけ始めた。
イヤリングやアンクレット、指輪や髪飾りも。
どれも華奢なデザインで上品な印象だ。
アクセサリーなんて身につけるのは久し振りだ。少し、楽しい。
「カナエ、綺麗だ。」
『あ、ありがと……。』
ミンク族とはいえ、男性よりも女性に綺麗だと言われる方が真実味があるのは何故だろうか。
素直に嬉しいと思える。
と言うのは歳のせいだろうか……。
カナエが意識の老化に愁いをいだいていると、キィ、と音を立てて部屋の扉が開いた。
「ワンダ、来たぞ……、げ。」
『あ。』
「イッカク!待っていたぞ。」
げ、とは何だ。げ、とは。
イッカクはワンダに呼ばれて部屋に訪れたようだ。
何も知らないワンダは、ニコニコと楽しそうにイッカクに手招きをした。