第42章 あと、3日。
なるほど、イッカク用のドレスもあった訳か。
ワンダはイッカクに、まずは装飾品を見せ始めた。
あのグリーンのドレスは彼女が着たらとても似合いそうだ。
イッカクとカナエ。
二人がドレス姿で登場したら、見た者は皆イッカクに目が行くだろう。
人を魅了する身体だ。
自分は引き立て役にすらならないかもしれない。
「このネックレスはどうだ?このドレスに合うと思うぞ。」
「うん、綺麗……。」
自暴自棄なカナエの横で、二人はドレスのコーディネートに話を弾ませている。
『コーディネートはこーでねぇと……。』
「ん?何か言ったか?」
『何でもないよ、ふっ。』
ローがゾウに上陸するまで、あと3日程だ。
再会する時にはイッカクも自分もドレス姿なんだろうなぁ、と何となく考える。
綺麗だ、
なんて彼が口にすることは、きっと無い。
だが、彼の視線を奪うのはどちらだろうか。
「さあ、イッカク。着てみてくれ。」
「…………これが、アタシの……?」
イッカクの前にドレスが広げられた。
見惚れているのか、ドレスから視線を外さない。
いくらガサツな彼女でも、綺麗に着飾る事が嬉しいのだろう。
「…………。」
「どうしたのだ?」
「…………。」
照れているのか。
黙ったままのイッカク。
『…………着てみてたら?似合うと思うよ。』
いつもはつなぎを着て、海賊として生きている彼女。
ローの事は置いといて、単純に美しく変貌した姿を見てみたいとカナエは思った。
『ほらほら、私も手伝うからさ。』
「さァ、服を脱いで。」
『髪の毛とかもさ、綺麗にまとめようよ。やってあげる。』
「それは良い!美しい髪留めもあるぞ。」
何だか楽しくなってきた。
男達に埋もれていた原石を、自分が宝石に磨き上げる。そんな気持ちだ。
「イッカク?」
ワンダが、イッカクの肩から服を下ろそうとした時だった。
イッカクは自分の服をガシッと掴み、ふるふると震えながら、小さな声で何やら呟いている。
「………………………………………………………………だろ。」
『え?』
「よ……………………のに、……………………ェだろ。」
『よ?』
「よ?」