第42章 あと、3日。
「これを、ゆティアに渡しに来たのだ。」
『私に?これ何?』
ワンダが包みの結び目を解くと、中には光沢の美しい、シルク生地が入っていた。
深いグリーンと薄いベージュ。
二種類ある内のグリーンの生地を手に取ったワンダは、それを広げてカナエの体に当て、うん、と満足そうに頷いた。
「思った通りだ。とてもよく似合う。」
『え、これって、』
とても美しい、イブニングドレス。
ミンク族は友情の証として衣服の交換をする。
ワンダは、ミンク族が救われた事の感謝の意として、きらびやかな装飾品と共に、二つのドレスをカナエに渡しに来たのだ。
『ワ、ワンダ、ちょっと、よく見せて。』
「ああ。よく見て、好きな方を選ぶといい。」
『…………。』
勘弁してくれぇい。
それはそれは露出の多いドレスだった。
ロングドレスだから足は問題ない。
しかし上半身に関しては、これはもう紐なんじゃないかと思うくらいの生地の少なさだ。
ナミのような魅惑的な体なら様になる。
巨乳であれば、この紐はピン、と張りを持って本来の役割を果たすだろう。
だが自分はどうだ。
突起部分を隠す筈の生地は行き場を無くし、見事な貧乳が露になるに決まっている。
『ワンダ、これはナミみたいな子が着るヤツ…………!!』
「ナミが?これはゆティアに持って来たのだ。ナミではないぞ?」
気持ちは嬉しいが。
『も、もうひとつは?見ても良いかな。』
「もちろんだ。」
そう言うと、ワンダはベージュのドレスを広げて見せた。
素晴らしい。
グリーンのドレスとは打って変わって露出が少なそうだ。
肩紐から垂れた布地。
ゆったりと柔らかい襞(ひだ)は弧を描いてボリュームがある。
鎖骨の辺りまで隠れそうなデザインであるから、貧乳の事は気にする必要が無さそうだ。
袖が無いから二の腕や肩は丸見えだが、ロングドレスで足は見えない。そこは譲歩しよう。
『これにする!』
「気に入ったみたいだな、良かった!」
早速着替えよう、とワンダはカナエの手を取り、木の上の女部屋へと向かって駆け出した。