第41章 ある日、森の中。
長男・ペンギン、末っ子・ベポ。
その間の兄弟達は、その他の全船員らしい。
大所帯だ。
ジャンバールは、何故か隠居したおじいちゃん。随分強面のお年寄りである。
船長のローは、やはり一家の大黒柱である父親だと、皆で声を揃えて言った。
自分の役は何だろう。
皆一人一人役割が決まったのに、自分の名前が挙がらない。
『あ!』
カナエが一抹の不安を感じた時、居住区が見えてきた。
太陽の位置を見ると、もう昼頃だろう。
「腹減ったなー!」
「俺は眠い。」
皆、体が休息を欲している。
軽く食事を済ませて、夜に備えて早く仮眠を取った方が良さそうだ。
「俺、何か作ってくるよ。」
「俺達も洗濯仕上げねェとな。」
『そうだね。』
役が与えられなかったのは気にしないでおこう。
少しだけ、涙が出そうだが。
「カナエは何の役割だろうな。」
おい、ジャンバール。スルーされたのに掘り下げてくれるな。
「お前ソレ、聞くまでもねェだろ。」
「キャプテンがお父さんなら、カナエはその奥さんでしょ?」
『そ、そう……かな。』
「愚問だったな。すまん。」
素直に嬉しいけど。
イッカクは?
と、素直に喜べない自分もいる。
当たり前のように、立ち位置が嫁に決まった。
彼等は二人の関係を知らないのだろうか。
カナエがそんな事を考えているのは露知らず。
皆はそれぞれ仕事に向かう。
『はぁ、』
カナエは何となく足取りが重い。
くよくよ悩んでいる根暗な自分が重い。
「ねえ、カナエ、」
ベポがカナエの耳に、白くて丸い、ふわふわの手を当てて、コソッと小さな声で呟いた。
「さっきは、ありがとね。」
『どういたしまして。』
へらっ、と笑う白いくまさん。
さっきの気持ちが一気に吹っ飛んだ。
ベポの白い毛並みに、自分の黒い心が洗われていくようだ。
へらっ、とカナエも頬が緩む。
『お礼を言いたいのはこっちだよ。』
「え?何で?」
『まあまあ。』
二人揃って、人差し指を口に当てて。
ベポが泣いていたのは、秘密。