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例のイケメンは凶暴な男。【ONE PIECE 】

第41章 ある日、森の中。



『あったかい……幸せ。』

「…………うん。」

ベポのつぶらな瞳から、ボロボロと大粒の涙がこぼれた。
肩を震わせて、次から次へと溢れ出てくる。

「あのね、」

『うん。』

「兄ちゃん、死んでたんだ。」

『兄ちゃん?』

「ペドロの兄貴が話してくれたんだ。旅の途中で、兄貴の目の前で死んだんだって。」

『……うん。』

ベポが海を出たのは、年の離れた兄を追い掛ける為だったらしい。
そして何を間違えたか、ノースブルー行きの船に乗り込み、辿り着いた先がスワロー島。
ローやペンギン、シャチと出会って、ゾウに帰る為に航海術を必死で勉強した。

実に、14年ぶりの帰還。

ベポにそんな過去があったとは。
SBS とかに載っていた覚えは無いぞ。私は。

『ベポ、大丈夫?』

「うん!兄ちゃんには会えなかったけど、たくさん話を聞けたから良かった!兄ちゃん、漢だったって!」

『あの……。』

「何?」

話してくれた事は嬉しい。
でも、話を聞いて一つ心配な事ができた。

『あのさ、ゾウに帰って来れたから、ベポの目的は達成されたんだよね……。』

そして、会いたかった兄は死んでいた。
しかしここには、彼の家族や親族、幼い頃の友達がいる。
14年前、ベポは8歳。
海賊としての人生の方が長くても、ここは彼の故郷なのだ。

『ここに留まるのかなって……。船にはもう乗らない……のかなって……。思うのですが……。』

「何言ってんの?俺の家はポーラータング号だよ?」

『え、あ、ホント?』

「そうだよ。キャプテンとか、ペンギンとシャチとかさ、皆が俺の家族だよ。」

何だ。心配するまでもなかったな。

『何か拍子抜け……。』

「えェ……。ナニそれ。俺良い事言ったよね?」

『言った言った。感動的。』

「馬鹿にしてない?」

してない!と、全力で否定した。

家族、と当然の様に言えるのが羨ましい。
でも今は、ベポが家族と呼ぶ船員の一人と一触即発だ。
タイマンが始まったら、ベポが味方するのは家族であるイッカクだろうか。

『あぁーあ!もう!面倒くさいなぁ!!』

「えっ!?何!?」

『何でもない!!私の事!』

「怖いよカナエ、…………あ。」

『ん?』

森の木々の間から、この世の終わりの様な叫びが聞こえてきた。
まだ遠くにいるその声は、森中に響き渡っている。
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